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雅楽 「上牧小学校で雅楽の授業」篳篥奏者 中村仁美様


 雅楽のコンサートや講座など、広く日本や海外で活躍されている篳篥奏者“中村仁美”さんが自ら2年前より上牧小学校で雅楽の授業を行っておられます。雅楽協議会の「雅楽だより第60号」に記事を投稿されていましたので、地域の皆さんに広く知って頂きたく紹介致します。

 

  上牧小学校で雅楽の授業

          中村仁美

今年も上牧小学校の6年生に雅楽の授業をしました。篳篥の蘆舌(リード)用のヨシが生えているヨシ原のすぐ横にある小学校です。
 篳篥を見せて、この吹き口は何でできてる?と聞くと「ヨシ!」と答えてくれます。どこのヨシ?と聞くと「ここ」と窓の外を指さします。おー。さすがよく知ってるね。4年生の時にはこのヨシでよしず作りをしているそうです。

感じたことを素直に表現してくれる子供たちで、友達とも仲良くやり取りしながら篳篥や龍笛の音を出していました。

 下校の途中にもう一度教室に来て、面白かった!と言ってくれる子もいて嬉しいなあ。

篳篥の蘆舌のように潰して削るのはなかなか難しいので、手作りヨシ笛(きり出しリード)を去年紹介したのですが、なんと校長先生が自分で作って吹いてくれました! 10本くらい作って試してくださったそうです。実践する先生、素敵です。また来年も行きたいな。

上牧小学校での授業の後は、長年ヨシ刈りをしてくださっている木村さんに案内していただいて、篳篥蘆舌の材料となるヨシの生えている淀川沿いの河原を案内していただきました。
 高速道路の工事は着々と進んでいるらしく、土手の上からも高いクレーンなどが見えます。高圧線の鉄塔は道路の邪魔にならない所にすでに移動が済んでいました。

そして、ヨシ原。暖かいのでまだ枯れていません。気になるつる草ですが、道路から淀川が丸見え。つまり以前は高いヨシやオギが生えていたのに、ここ数年毎年つる草に押し倒されて、高い草が亡くなってしまったのです。恐ろしや。いつか道路の反対側も・・・
ヨシ原は5年ほど前とは全く違ってしまっています。...

いい蘆舌が作れそうな硬くて太い立派なヨシも、つる草にからめとられては、どうしようもありません。悲しい。年々被害が拡大してヨシ原がつる草に制服されていく。なんとかできないのか。

今年は、地元の方、河川事務所の方が、5m四方ほどの場所に試験的に木のチップを敷いて、つる草の発芽を抑えられないのか、実験してくださっています。当初かなり実効性がありそうだったですが、周りからつる草が伸びてきたり、雑草が生えてきたりしていてその効果は刈り入れ時にならないと検証できません。また、木のチップを長年敷いた場合の弊害を考える必要もありそう。そして、ヨシ刈り入れをしてくださる地元の方も高齢化が進み、今年は〇○さんも刈るのをやめたらしい、という話。小雨の降りそうな曇り空の中、重い気持ちでヨシ原を後にしました。

          (雅楽協議会「雅楽だより第60号」記事より)

 

篳篥の演奏の指導をする中村仁美さん。篳篥の蘆舌のヨシの生育するヨシ原から一番近い上牧小学校での雅楽の授業。


下記、ヨシ原の写真①~⑤(20191126日撮影)と説明文は、雅楽協議会 「雅楽だより」編集担当 鈴木様によるものです。

写真 上牧・鵜殿ヨシ原で高速道路建設の工事が進む。右側のクレーンがヨシ原の中に建つ橋脚の基礎工事。左側のクレーンは対岸の工事。

写真 木材チップを敷いた箇所。チップを敷かない箇所に比べるとつる草や雑草は少ないが、周りからつる草が忍び込む。また木材チップは時間の経過とともに土に還るので、数年後はつる草や雑草などが一層繁茂するので木材チップを敷いての対応は難しいとのこと。

写真 何の対応もされずにつる草や雑草が伸びているところは、ヨシが押し倒されていく。ヨシ原にはこのようなところがとても多い。

写真 NEXCOが毎月1回程度定期的に専門業者に依頼してつる草などを除去する調査区域。つる草などを除去しているのでヨシだけが生育している。

写真⑤ 左側は定期的につる草などを除去しヨシの育っているNEXCOの調査地域、右側は何の手を入れないヨシ原。左と右の境目は一目瞭然。左側の定期的に手を入れる地域はヨシが育つが、何もしない所は、つる草に覆われている。右側も定期的につる草を除去すればヨシが育つだろう。